007 ムーンレイカー

007 ムーンレイカー

あらすじ
 アメリカからイギリスへ空輸中のスペースシャトル「ムーンレイカー」がハイジャックされた。さっそくボンドはシャトルを製造したヒューゴ・ドラックスを訪ねるべくカリフォルニアへ向かう。彼の書斎で見つけた設計図にはベニスのガラス工房で製造している製品の設計図が。ベニスへ向かったボンドはガラス工房の建物の中に謎の研究所を発見、そこでは即効性の殺人ガスを研究していた。Qはそのガスの成分はアマゾンにしか存在しない植物のものであると突き止める。ボンドはアマゾンへ向かい、宇宙研究員になりすましていたCIA捜査官ホリー・グッドヘッドとともに人類をガスで抹殺する計画を知ることになる。

OPテーマ:Moonraker

レビュー
 ジェームズ・ボンドは任務上、世界各地へ飛び回る。南米の秘境や芸術の都、アジアの僻地に海洋プラントまで。そんな彼が11作目にして、とうとう宇宙へ飛び出した。スターウォーズに端を発した当時のSFブームに便乗して、新たな境地に辿り着いたのが本作だ…と、言いたいところなのだが内容はいつものボンド節を平常運転なので目新しさはない。あくまでボンドの様式を宇宙に持っていくという試みだ。それが果たして功を奏したか、は順を追って見ていこう。

 本作の見所は何と言っても世界を、そして宇宙を股にかけるボンドの活躍だ。カリフォルニア、ベニス(ベネツィア)、リオ、アマゾン、そして宇宙と目まぐるしく舞台が変わる。といっても舞台にさほどの意味は無く、カリフォルニアならでは、リオならではといった特徴が薄い。サンダーボール作戦や007は二度死ぬで見た、その土地独自の文化という面があまり見られない。

007 ムーンレイカー

 唯一ベニスでの運河のボートチェイスが目を見張るものであり、芸術的な水の都を滑走する姿は衝撃的だった。それにしてもムーアボンドはボートチェイスが好きだ。今作はアマゾンでもボートで追いかけっこしている。映像技術が発達してコネリーの頃に成し得なかった演出をしたいがために、だと思うがそろそろ正当なカーチェイスが恋しくなってくる。

007 ムーンレイカー
 宇宙から猛毒ガスを地球に散布して、人類の歴史をリセットしようろ企むドラックス。なんだか生理的にムカつく顔をしているが、やっていることは大物っぽい。演じたマイケル・ロンズデールは現在82歳の渋いお爺ちゃん。いい年の取り方をしている。

007 ムーンレイカー

 ドラックスの所有するスペースシャトル「ムーンレイカー」そして巨大宇宙ステーション。最終決戦の地として両者とも素晴らしい外観なのだが、如何せん内装が陳腐。同時代のSF映画スターウォーズと比較すると、質感や造形が見劣りしてしまう。SF映画の金字塔と比べるのは酷かもしれないが、終盤の見せ場なのだからもう少し健闘して欲しかった。
 また宇宙空間での戦闘シーンも緊迫感ゼロ、お笑いモノとして一蹴されてもおかしくない出来だ。独特の黄色い宇宙服が一層笑いを誘い、放たれたレーザー銃は致死させる代物には到底思えない。ドラックスの計画を阻止しようと命からがら宇宙くんだりまで追いかけたボンドも思わず脱力してしまうだろう。

007 ムーンレイカー

 スピード感溢れる展開も、どちらかと言うと雑に感じてしまいイマイチ物語に没入できない。特にアマゾンでの一幕はひどい。ボンド得意のボートチェイスをした後に、歩いていたら美女がいてホイホイ着いていき、その先の敵の秘密基地である遺跡にて捕まってしまう。適当にも程があるだろう。また遺跡の秘密基地にて搭乗員になりすまし、ムーンレイカーに乗り込む場面もザルな警備が目立ち過ぎて喜劇にしか見えない。コネリーの時代なら許されただろうが、11作目ともなるとコレは…と思ってしまう。

007 ムーンレイカー

 さて前作「私を愛したスパイ」から続投して登場するのが殺し屋「ジョーズ」だ。文字通り不死身の男として再びボンドの前に立ちはだかるのだが、前作よりもコメディチックな演出が盛り込まれ非常に愛嬌のあるキャラクターに生まれ変わっている。しかも終盤には愛に目覚め、利害が一致したボンドと協力してドラックスの野望を打ち砕くという活躍。また序盤に繰り広げられる、ボンドとジョーズのスカイダイビング中の取っ組み合いは、ムーンレイカーのハイライトとも言うべきスーパーアクションで目が離せない。その優遇っぷりから、彼がどれだけ愛されているかわかる。

 ここまで読んでくれた方、お察しのとおりムーンレイカーは怪作だ。まさにムーア版「007は二度死ぬ」はたまた「ダイヤモンドは永遠に」といったところだろう。荒唐無稽で纏まりのない映画という寸評は揺るぎ無い。しかしツボにハマる人はハマるらしく、熱心なファンも存在する。ムーアのユーモアたっぷりな言い回しは絶好調だし、ホバーボートや仕込みダーツ銃など魅力的な秘密兵器も多い。アクションとコメディの配分が絶妙なのも確かだ。あまり余計なことを考えずに見る娯楽映画としては、及第点かもしれない。

007 ムーンレイカー
 ボンドの上司であるMを長年勤めたバーナード・リーは次作「ユア・アイズ・オンリー」を前に死去した。三度目の起用にして最後の主題歌担当となったシャーリー・バッシーといい、ムーンレイカーはある種007映画の継ぎ目ともいえる作品だ。

007 ムーンレイカー

 ボンドガールのグッドヘッド。CIAのエージェントとしてドラックスの元へ潜入捜査していた。それにしてもヒドイ名前だ…。

ミリタリー
※ここでは007が使用した銃火器を中心に紹介します。全部挙げてたらきりがない!

 今作も登場PPK!と言いたいところだが、何と一度たりとも姿を見せない。ストライキか。
他に使用する銃は架空のレーザー銃と、ドラックス邸で借りた狩猟用のライフルだ。詳細がわからず情報を持っている方がいたら教授して欲しい。


 以上。次回は「ユア・アイズ・オンリー」になります。





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2013年06月23日 Posted by ビスコ  at 01:39 │Comments(0)007

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