007 私を愛したスパイ

007 私を愛したスパイ

あらすじ
  
 核ミサイルを搭載した英潜水艦「レンジャー」とソ連潜水艦「ポチョムキン」が突如消息を絶った。調査を命ぜられたボンドはエジプト・カイロへ飛び、そこで同じ目的でソ連が派遣したKGBの女スパイ、アニヤと出会う。

 共同で任務に当たるが、事件の直前、オーストリアでボンドに差し向けられ、返り討ちにあったソ連の殺し屋が彼女の恋人だった。「この任務が終わったら、あなたを殺すわ」そう言われたボンドは彼女と共にアメリカ海軍の潜水艦に乗り込み、怪しいとにらんだストロンバーグ海運のタンカーに接近する。ストロンバーグは米ソを核攻撃し、世界を壊滅させ、海の世界を作ろうとしていた。

OPテーマ:Nobody Does It Better

レビュー
 とうとう節目となる10作目のボンド映画。ムーア版の1・2作目は決して傑作と呼べる内容ではなかったが、本作において3代目は転機を迎えることとなる。興行的にも歴代トップクラスの記録を叩き出し、ボンド人気は完全復活と相成った。

 「私を愛したスパイ」は決して派手な映画ではない。マンネリズムもピークに達し、過去作からの目立った改変も見られない。が、全てにおいて水準が高い映画だ。まず目につくのは冒頭から全編通して見られる過去作のオマージュである。スピーディでアグレッシブなスキーシーン(女王陛下の007)、寝台列車での格闘(ロシアより愛をこめて)、サメや水中戦そして核ミサイル(サンダーボール作戦)、ヘリと車のカーチェイス(007は二度死ぬ)、海洋学や巨大水槽(ドクターノオ)、キャラの濃い敵ボスの手下(ゴールドフィンガー)など、軽く挙げただけでもかなりある。10作目というアニバーサリーへの意気込みなのだろうか。ボンドファンに言わせれば、とても贅沢な内容なのだ。

 ロジャー・ムーアも脂がノリまくりで、コネリーとは違った趣を確立した。十八番の捨て台詞が光り、ニヤリとすること受け合い。とくに冒頭の、雪山にある小屋で情婦と交わした、去り際の会話が耳心地がいい。
「待って。私にはあなたが必要なの」
「英国も必要としている」
自惚れでもなんでもない、プロフェショナとしての言葉だ。

007 私を愛したスパイ

 私を愛したスパイでは久しぶりに奇抜なボンドカーが登場する。今なお人気の高い「ロータスエスプリ」だ。特撮映画で主人公が愛車にしていそうなフォルムで、日本のスーパーカーブームに偶然にも乗っかる形になった。秘密兵器を数多く搭載し、念願(?)だった潜水機能も完備している。カーチェイスの果てに海へ飛び込み、優雅に泳ぐ姿は夢に溢れる。スモッグやオイルガンなども搭載し、まさにQ様様。字面だけでは荒唐無稽なトンデモ機能に思うだろうが近未来を予感させる車、ロータスエスプリだと許せるから不思議だ。ちなみにこの車、撮影用に計7台用意されたそうな。

007 私を愛したスパイ

 忘れてはならないのが悪役「殺し屋ジョーズ」の存在だ。ゴールドフィンガーで異彩を放ったオッドジョブに迫る、超難敵色物キャラとしてスクリーンに登場した彼のインパクトは凄まじく視聴者を喜ばせた。大柄なボンドをさらに見下ろすほどの巨体、車の外装を引き剥がす怪力、鎖を噛みちぎる鋼鉄の歯、何度倒しても立ち上がる不死身のボディ。規格外な敵に追いかけまわされ度々ボンドは窮地に立たつ。観客はそれをハラハラしながら見るのだ。

 さて、イイとこ尽くしに思える「私を愛したスパイ」だが総決算の大作ゆえに欠陥もある。それは先に書いたとおりマンネリズムを指す。純粋にパワーアップした映画も元を辿れば過去の007映画にたどり着く。基本的な部分は変化が見られないため、どこかで見たようなシーンの連続、という印象は拭いきれない。コミカル、ハードアクション、ラブロマンス、スパイとしての矜持、それらがバランスよく配分され安定感はあるのだが、総合して「ロータスエスプリ」「ジョーズ」といった記号的な独自色しか残らず、僕個人の中では地味な部類に入る。

 しかし僕が述べたマイナス点は、どうしてもムーア前2作が(色んな意味で)濃厚すぎるが故の感想なので、実際には派手でゴージャスな戦闘シーンなどが多分に含まれている。技術の向上も目覚ましく、決戦の地となる敵の基地アトランティスや中~後半の山場の舞台、巨大タンカーのリパルスも規模や内装がこれまでと段違いで、当時の映像美術としては革新的と言ってもいい。ウィットに富んだボンドも素敵で、ムーアが長期政権を成し遂げた理由がよくわかる。節目の作品として、これ以上ない娯楽巨編なのは疑いようのない事実だ。

007 私を愛したスパイ
ボンドガールはKGBのスパイ「トリプルX」ことアニヤだ。以前の任務で恋人をボンドに殺されるもプロに徹し、仕事に誠実なボンドを最後は許した。ドラマティックな二人の関係がどう描かれているのかも、本作の見所だ。

ミリタリー
※ここでは007が使用した銃火器を中心に紹介します。全部挙げてたらきりがない!

ワルサーPPK(画像はPPK/S)

007 私を愛したスパイ

左腕で肘を抑えながら撃つスタイルが印象的。銃撃戦でも中々の活躍。僕もサバゲの時は真似しようかしら。当たる気しないけど。


スターリングmk.2

007 私を愛したスパイ
イギリス発のサブマシンガン。リパルス内で敵から奪って使用。(悪い意味で)安心と信頼のイギリス勢、ではなくシンプルで洗練された機構は扱いやすいと現場で評判。第三国では未だ現役らしく、その性能の良さが伺える。過去にトイガンにもラインアップされているが、現在生産している商品があるかは不明。

次回は「007 ムーンレイカー」になります。





同じカテゴリー(007)の記事画像
007 ゴールデンアイ
007 消されたライセンス
007 リビング・デイライツ
007 美しき獲物たち
007 オクトパシー
007 ユア・アイズ・オンリー
同じカテゴリー(007)の記事
 007 ゴールデンアイ (2013-08-18 16:46)
 007 消されたライセンス (2013-08-13 19:54)
 007 リビング・デイライツ (2013-07-30 17:52)
 007 美しき獲物たち (2013-07-26 12:42)
 007 オクトパシー (2013-07-09 17:39)
 007 ユア・アイズ・オンリー (2013-06-26 19:59)

2013年06月11日 Posted by ビスコ  at 17:44 │Comments(0)007

<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。