State Of Graceって知ってる?

前回に引き続き映画ネタです。興味ない人はゴメンね。最近TSUTAYAに加えてdmm.comとの両刀使いになってしまい、DVD視聴に拍車がかかってまして。一日一本とまではいかないですけど、時間が許すならその生活がしたいです。
今回もネタバレ満載でお送りするのが90年公開の映画「State Of Grace」です。主演はショーン・ペン、脇を固めるのはゲイリー・オールドマン、エド・ハリス、そしてヒロインのロビン・ライトです。なんちゅー豪華な映画だ。前から気になっていたのと、L.A.ギャングストーリーのショーン・ペンが不憫だったので借りました。

主人公のテリーは少しやんちゃな青年。人殺しをして一皮剥けたあとに故郷へ戻り、かつての友人たちとの交流を再開します。が、実は潜入捜査官のテリー←かなりのネタバレ。ボストン警察に籍を置くれっきとした警官です。故郷のアイルランド系ギャングを捕らえるために抜擢されました。

主人公の親友ジャック。沸点が低く、すぐカッとなって殴ったり蹴ったり時には殺っちゃったりします。でも根は友達(身内)思いのいい奴です。ヤッピー、つまり若い知的階級層が嫌いな一面も。現在、兄フランクの下でアイルランド系ギャングをやってます。テリーの任務は彼を逮捕することでもあるんですね。

フランクは一帯のアイリッシュギャングをまとめる男。ジャックの兄でもあるけど性格は真反対。目的のためなら手段を選びません。それにしてもエド・ハリス、この頃からイイおでこしてます。関係ないけど映画「ザ・ロック」のDVDパッケージはハリウッド4大ハゲ(ビスコ認定)のうち3人がそろい踏みして圧巻ですね。

キャサリンはフランクたちの妹ですが、悪事には一切関与しないカタギです。テリーとは昔色々あったようで、再会してからは友達以上恋人未満の関係に。兄弟のこと(というより、その生き方)を軽蔑しており、物語において結構宙ぶらりんな存在。

さて潜入捜査を開始したテリーですが、基本的にはギャングと同じように行動。フランク一味と共に飲み屋へ行って「ウチから酒を仕入れろ」と脅迫します。しかし一味のうちテリーとジャック共通の友人であるスティーブは年老いた店主に暴力を振るうやり方を非難。仲間割れが始まります。本当チンピラの集まりですね。

またフランクは組織の磐石を図るためイタリア系マフィアのボレリと手を組もうと画策します。ボレリの部下であるカバロはスティーブに金を貸していて、それが一向に返済されず示しがつかないとフランクに訴えます。そうなると仕事が早いこの男。先の仲間割れも火種の一つとなり、スティーブは海の藻屑に…。

スティーブの死に、友達思いのジャックは飲み明け暮れます。そしてスティーブ殺しの犯人をカバロだと思い込み、暴走をはじめるのです。教会で泣き崩れるシーンがいいですね。タイトルのState Of Graceは「神の恵み」という意味です。意味が広義過ぎて映画のいたるところに当てはまるのですが、ここが象徴的なシークエンスといっていいでしょう。

テリーも自身の立場と親友を思う気持ち、スティーブ殺しの真犯人の発覚、キャサリンとのすれ違いなどから徐々に不安定になっていきます。しかし残念ながら映画の根幹ともいえるテリーの苦悩はイマイチ伝わってきません。結局テリーはフランク一家に起こる出来事の狂言回し的な立ち位置から脱却できないんですよね。この映画が評価されず知名度が低いのも、この辺りが影響していると思います。

たまたま飲み屋でカバロと居合わせたジャックは、一寸の迷いもなく彼を射殺します。余談ですけど古い映画なんで、撃たれる前に血袋のふくらみが見えたり、血飛沫のタイミングがおかしかったり結構目に付きます。

すぐ親玉ボレリの耳に入り、フランクは出頭を命ぜられ対談に臨みます。用心深いフランクはジャック率いるボレリ襲撃チームを用意。しかし偶発的な重なりで突入の機会を失った一行、ボレリの要求「ジャックを殺せ」をフランクは聞き入れる他なくなりました。

フランクは非情な男です。ジャックを波止場へ呼び出し、冷酷に射殺します。最後まで兄を信じたジャック。彼を思うと不憫ですが、組織の長として実はフランクの行動は至極まっとうな気もします。マイケル・コルレオーネの行動を非難する観客は少ないでしょ?見方を変えれば、捉え方も変わります。

親友を失い、愛の寄る辺を失い、そして警察までも辞したテリー。残されたのは復讐の道です。悲壮な覚悟を持ってフランクのグループを襲撃。自身も満身創痍になりながら、ジャックの敵を取ります。果たしてジャックは本当に仇討を望んだのだろうか。不仲とはいえ家族を陥れられたキャサリンの胸中はいかに。そんなわだかまりを残しながら、物語はフェードアウトしていきます。

State Of Graceはギャングのストーリーというよりも、友情物語としての側面が強いと思います。後発ですがアル・パチーノとジョニー・デップの「フェイク」に似ていますね。ジョニー・デップの演技がマジで素晴らしく、ラストは胸にこみ上げるものがありました。しかしState Of Graceは余韻もなく「結局なにも残らなかった」という印象で終わってしまいます。テリーは選ぶことができず、まやかしの理想を追いかけていました。
任務を遂行する、親友は助ける、キャサリンを手に入れる。どれも実現しませんでした。その優柔不断さが神経毒のように内側から浸透していくのですが、物語の終盤間際までテリーにあまり自覚がないのがチョット…結果論でしかない彼の行動原理には共感しづらいです。

とは言いつつもイイ映画でした。その8割くらいはゲイリーとエドの魅力によるものですが。ショーンは主人公の性格に恵まれなかった。若い頃のゲイリーはキレッキレで、本当にかっこいいです。M10で遊ぶ姿も面白かった。心に残る映画ではないですが、好きな俳優が出ているからという理由で観ると得した気分になるくらいには面白い作品でした。