ダイ・ハードinジョン・マクレーン

(今回は映画のレビューじゃないです)
なぜか急にジョン・マクレーンという人物について書きたくなった。なぜだろう。これは何かの前触れなのだろうか…?いや、気のせいだ気のせい。
ダイ・ハードと聞いて「何それ?アニメ?」なんてトンチンカンな事を言い出す人は、ミリブロを閲覧する諸氏の中にいないと思う。世界的に有名なハリウッド俳優ブルース・ウィリスをスターダムに押し上げた、名作アクション映画なのは周知の事実だ。
未見の方のために物語の顛末を話しておこう。ブルース・ウィリス扮するNY市警刑事のジョン・マクレーンがクリスマスに家族と会う為ロサンゼルスへ行く。迎えのリムジンに乗り、勤務中の妻ホリィがいるナカトミビル(日系企業)へ向かい再会するもビルを強盗グループに占拠されてしまい、二人は離ればなれに。トイレにいたことで拘束を逃れたマクレーンは囚われた人質を助けるため、一人で悪党に立ち向かう。

ハリウッドのヒーローアクション映画のお約束、ジョン・メイトリックスよろしく一人で多数を相手にした大立ち回りが見物だが、同じジョンでもマクレーンとメイトリックスは決定的に違う部分がある。
マクレーンは怪我をする。それも満身創痍の大怪我だ。そりゃ人間なんだから怪我くらいするだろ、と言うかもしれないがマクレーンの重傷具合は他に類を見ない。この頃のハリウッド映画は主人公が神格化され無敵のヒーローが定番だった。フィクションというメリットを最大限に活かすスクリーンの主人公たちは観衆の憧れであったし、ヒーロー像とはかくあるべきだ、と定義されていた。
しかしマクレーンは違う。無敵どころか無様に逃げ回ることも少なくない。強盗グループの中でも抜群に腕っ節のいいカールの方がよっぽど超人だ。そんなマクレーンがどうやって物語をハッピーエンドまで持って行ったのか、が映画の見所でありマクレーンを紐解く重要なカギとなる。

物語中盤まで、マクレーンの存在が強盗グループには知られない。もちろん何か「ジャマ者」がビルの中で動き回っているという認識はある。しかし明確に把握されないようにするため彼の頭脳は抜群の働きを見せたのだ。マクレーン最大の武器、それは「知恵」だ。といっても粗野で荒っぽい言動の目立つマクレーンは決してインテリジェンスなキャラクターではない。彼が発揮したのは「生きようとする本能=知恵」なのだ。
マクレーンは終始裸足で行動した。そしてランニングシャツにスラックスというダサ…印象深い服装でビルを駆けまわった。そんなことをした理由はひとつ。裸足になることによって足音を立てずに済むし、着衣を最小限に抑えて身軽に行動できるようになる。ビルという環境下でのみ許されたゲリラスタイルだ。
ゲリラ的ヒーローといえばランボーが思い出されるが、彼は軍隊仕込みの経験から得たスキルでNY市警勤務のマクレーンとは根本が違う。NY市警が「ビルに潜り込んだら裸足で飛び回れ」と教育したようにも思えない。まさに生き延びるため自ら発案した知恵だ。
加えて彼は犯罪者の心理もよく理解していた。無線で相手を挑発して理性を失わせるなんてことは朝飯前。一味の死体を見せしめにして得体の知れない恐怖を与える、というヒーローらしからぬ行動にも出た。それらは功を奏し本来劣勢であるマクレーンを強盗たちと対等な立場にした。

性格もヒーローとは言い難い。言葉は汚く「殺してやる!」「てめぇみてえのは、いなくなった方が世の中のためになる!」などと平気で口走る。また権力者にも屈しず、独自の倫理観もある。例えばある人質がマクレーンを無線でおびき出し、引き換えに助かろうとする場面。マクレーンは応じず、交渉した人質を犠牲にすることになっても大局は見失わず冷静に対処した。これまでのヒーローは例え結果的に犠牲者を出すとしても、その過程で人質を見捨てたりはしない。もしチャック・ノリスがマクレーンの立場だったら、これを好機に敵前に姿を現しバッタバッタと悪党を薙ぎ払い全員を無事に救出するという、ロマンティックな最善を尽くすのだ。しかしマクレーンは現実主義者である。自分を売ろうとした人質を憐れみ、自分を責めながらも多数の人命をこの手で助ける事を選んだ。
マクレーンを語る上で欠かせないのが「“Yipee-yi-yea... mother-fucker.”(イピカイエー、くそったれ)」という台詞だ。イピカイエーはカウボーイ由来の言葉で、ロデオの時に発するものだという。また彼は劇中で犯人に「ジョン・ウェインのつもりか」と聞かれた際「ロイ・ロジャースが好きだった」と答えている。ロイ・ロジャースは西部劇で活躍した俳優・ミュージシャンで、国内における公開作品は少ないものの全米では名の知れた「ミスター・カウボーイ」だ。以上の事からマクレーンの自警主義はカウボーイ精神に倣っているといえる。
ではカウ・ボーイとは何なのか。ずばり馬と馬車を使った物資移送業者である。今ではウエスタン映画の花形であり、治安維持機構のようなイメージだが実情はまったく違う。だがマクレーンが幼少より慕ってきたのは、スクリーンで「仁義」「ワイルド」「正義感」「使命感」を纏った開拓者だ。映画が創り上げた虚像に憧れる映画の主人公という面白い図が成り立つ。マクレーンは荒れた大地で戦うカウボーイの姿を自分に重ね奮起していたに違いない。
かくして事件解決に孤軍奮闘したマクレーン。ホリィと無事ビルから抜け出し物語はハッピーエンドを迎える。彼の活躍に険悪な仲のホリィはすっかりホレなおす。最後は必ず勝つ、というのがわかっていてもドキドキ胸を高鳴らせながら見てしまう映画、それがダイハードだ。それまでのヒーローのお約束を破り、逆に新たなお約束を打ち出したジョン・マクレーンの功績は大きい。
そのマクレーンがなんでも近日我がGBに入隊するとか何とか…ごにょごにょ。

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